研究内容

私達の研究室では,おもにマウスの系を利用して生殖細胞の「なりたち」と「はたらき」に関する研究を行っています。雌雄生殖細胞の特殊性を分子・細胞・個体レベルで調べることによって,生命発生に関する「正」と「負」の高次制御機構を明らかにしたいと考えています。また,将来,これらの基礎研究成果を食料・医薬品生産や生殖・再生医療,および環境問題などへ応用することも念頭に入れています。

 年間億単位の研究費を獲得できるような大型研究室ではありませんが,ケペル先生(?)の「何でも考えなんでも知って,何でもかんでもやってみよう~!」をモットーとして,研究の好きな愉快な仲間と一緒にがんばっています。

 具体的には,以下のような研究テーマを進行させています。


(1)精子形成


 精子形成は非常に特殊化された発生分化プロセスで,各種遺伝子の発現が転写,転写後,および翻訳レベルで厳密に制御されています。精巣特異的に発現し細胞質に局在するポリAポリメラーゼ(TPAP)の解析によって,細胞質でのmRNAポリA鎖再伸長が転写関連因子mRNA特異的に制御されていて,それがタンパク質翻訳後の核輸送,さらには精子形態形成に関与する遺伝子の転写までリンクしていることが明らかになりました。TPAPがポリA鎖を再伸長する特定の転写関連因子群mRNAの認識機構・相互作用と,TPAPが制御する転写因子の特異的な核輸送システムの分子機構を解析し,精子形成の分子機構に関する新しい理論構築を目指しています。また,TPAP欠損マウスを利用し,アポトーシスを指標とした精細胞とセルトリ細胞間クロストークの分子機構と精子形成制御にもチャレンジしてみたいと考えています。


(2)受精


 受精の研究分野では数多くの遺伝子ノックアウトマウスが作製されましたが,長い間信じられてきた受精の基本的理論を全面的に肯定している結果はほとんどありません。精子の卵丘細胞層通過,卵透明帯の通過,および卵子との結合や融合に関与するそれぞれヒアルロニダーゼPH20,TESP5,ADAM1を中心に,その諸過程で機能する新規遺伝子の探索・同定と機能解析を試みています。また,それらの精子タンパク質と相互作用する雌性生殖器や卵子側の因子についても検討を加える予定です。


(3)卵子活性化と初期胚発生


 卵子は受精直後に精子由来のタンパク質によって活性化し,胚発生を開始します。ごく最近になって精巣で作られたmRNAが精子に蓄積・貯蔵されていることが報告されました。精子が卵子中に入って受精が完了すると考えられてきましたが,精子由来のタンパク質やmRNAが積極的に初期胚発生まで関与している可能性があります。精子が関与する卵子活性化と初期胚発生の分子機構を新しい見地から解析しています。


(4)未受精卵と受精卵でのタンパク質と遺伝子発現制御機構


 哺乳動物MⅡ休止期未受精卵には,受精と初期胚発生を円滑に進行させるためのタンパク質ツールが備わっているはずです。未受精卵にあるタンパク質の機能制御,蓄えられている母性mRNAの維持と翻訳制御を明らかにして,配偶子間細胞融合から前核融合前後までのタンパク質の挙動と遺伝子発現初発機構を分子レベルで明らかにしたいと考えています。


(5)受精卵と初期胚発生でのDNA脱メチル化とメチル化の制御機構


 高度にメチル化されている父方と母方由来のゲノムは,受精後の前核形成にともない急速に脱メチル化され,胚発生・分化にしたがってゲノムは再度メチル化を受けます。受精卵と初期胚発生でのDNA脱メチル化とメチル化の制御機構を分子レベルで解明することを試みています(本学応用生物化学系柳澤純先生との共同研究)。

馬場研究室について

馬場研究室ではおもにマウスの系を利用して生殖細胞の「なりたち」と「はたらき」に関する研究を行っています。雌雄生殖細胞の特殊性を分子・細胞・個体レベルで調べることによって,生命発生に関する 「正」と「負」の高次制御機構を明らかにしたいと考えています。また,将来,これらの基礎研究成果を食料・医薬品生産や生殖・再生医療,および環境問題などへ応用することも念頭に入れています。